国宝もよみがえらせる八女手すき和紙のすばらしさを世界へ発信!

400年以上の歴史を持つ八女の手すき和紙。一枚一枚、職人が手でつくる和紙は、掛け軸や障子紙などに使われてきました。高い評価を得ている一方、他産地と比べて知名度が高くないことが課題となっています。

久留米大学では、筑後地域に残る伝統工芸を研究し、より現代に合った形で広めていくために、2007年に比較文化研究所の中に文化財保存科学研究部会を発足しました。

原料である楮(こうぞ)の繊維が長く丈夫であること、それにもかかわらず薄く仕上げる高度な技術を近年上達させたことが現在の八女手すき和紙の強みです。耐久性の高い和紙は、数百年先に残すことを前提とする文化財などの修復に向いています。

楮が採れ、矢部川のある八女地方は和紙の生産に向いていました。国内では、すでに博物館等の古文書や絵画の修復に用いられています。

そのため、2013年からは修復技術に優れたイタリア、イギリスの博物館にプロジェクトチームで足を運び、専門家ともお会いして、八女和紙や久留米絣のことを知ってもらう活動を行っています。

2016年には、八女手すき和紙の修復紙としての可能性に興味を持ったイタリア・バチカンの機密文書館に招かれました。また、2018年3月には学術交流基金の助成と多くの寄付に支えられて、ローマ日本文化会館で職人による八女和紙の手すき、久留米絣の括り(くくり。糸をしばり図をつくる工程)の実演が行われ、多くの人が会場を訪れました。続いて、フィレンツェの国際学会にも参加しました。

イタリアのローマ日本文化会館にて行った実演会の様子。研究部会に所属する狩野先生は「欧米の人たちと話していると、日本文化へのリスペクト、関心の高さを感じる」といいます。

2018年3月には、イタリアの博物館コーディネーターである、イヴァーノ・フランカヴィラ氏が久留米大学を来訪し、文学部の学生たちと交流しました。また八女手すき和紙を制作する工房に学生も一緒に訪れ、学生たちにとっては、伝統工芸との接点を持ち、手すき和紙が世界からも注目されていることを知る機会になりました。文化財の保存、修復にぴったりの紙であることがもっと世界に知られてほしい、と願っています。

手すき和紙の工房に訪問した際のイヴァーノ氏と久留米大学の学生たち。
この来日では、サテライトオフィスにてイヴァーノ氏の講演会も行われました。

久留米大学とのプロジェクトには、職人の方々も前向きです。溝田和紙の代表・溝田俊和さんは「八女の手すき和紙の魅力が海外にも伝わっているのは嬉しい。数百年先も文化財として残るような和紙をこれからも作り続けたい」とお話しされました。

これまでの活動で、欧米では和紙への関心や需要が大きいと分かりました。今後は、実用化や販路を見つけることを目標に、情報発信や、世界の学芸員・コーディネーターとの連携、関心をもつ企業の発掘などを行っていきます。

【文化財保存科学研究部会について】
文化財、伝統工芸を科学的に研究し、その成果や魅力を広く発信している会です。文学部と医学部・経済学部等の教員が共同研究を行い、文理融合の研究体制をとっています。
近年、研究・活動してきたテーマは次の5つです。
1.八女の手漉き和紙
2.久留米絣・藍染め
3.クララ研究
4.クールジャパン
5.九州国立博物館との連携

久留米大学文学部、比較文化研究所文化財保存科学研究部会などの活動にご尽力いただいていた、久留米絣作家の松枝哲哉さん。2020年7月、食道がんのため64歳でご逝去され松枝さんを偲び、文学部の主催で2020年10月26日に「松枝哲哉さんを偲ぶ」座談会を開催しました。参加者それぞれの松枝さんとの関わりや思い出を語り合いながら五部にわたって松枝さんを偲びました。そのアーカイブがこちらです。

狩野 啓子

国際文化学科 特任教授

日本近代文学研究から、筑後の伝統工芸研究まで、幅広い研究領域を持つ。古い本や文書など、貴重な紙資料を食い荒らす虫を近づけないための特殊な紙を八女和紙で創り出せないかという思いから、10年以上文化財保存科学研究部会でプロジェクト研究を行ってきた。研究部会では、八女手すき和紙の職人や海外の研究機関と連携し、実用化を目指している。筑後の伝統工芸については、文学部産学連携事業の一環としても位置付けてきた。

文系の柔軟なアイデアで患者サービスを提案〜文医融合の「ほとめきプロジェクト実習演習」について〜 福祉の知識とマインドで子どもたちの学びをサポート〜うきは市学習・生活支援事業へのボランティア参加〜
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