現実社会において心理学はいかに貢献しているのか、または貢献できるのか。さまざまな現場での活動を通して、座学でえた知識を実際に活用しながら、心理学の広さと深さを体験的に理解するのが「心理インターンシップ」です。
児童発達支援事業所や介護施設、小中学校、特別支援学校、学童保育所など、心理学が活かされやすい現場で、教職員の方とともに働きながら、施設の利用者や児童・生徒などとのコミュニケーションを通して心理学の考え方や技法がどのように役立つのかを確認していきます。
「座学中心の学びと現場での活動を関連づけることで、心理学のエキスパートとして社会で活躍できる人間を育てる」というポリシーのもと、2008 年から始まりました。毎年多くの学生が参加しています。
実習前には、学科の教員による事前指導を行います。一般社会で求められる礼儀やマナーについてはもちろんのこと、実習を深める心理学的視点を共に考えます。
2020年の実習では、3つの学校、2つの医療・福祉施設、3つの学童保育所を実習先とし、21人の学生が参加しました。実習で大切なのは「観察と交流」です。実習先での日々の出来事を詳細に観察し、教職員の方や、児童・生徒、患者さんと積極的に交流することにより、事前に立てた心理学的視点を中心に考察を深めます。
実習後は、徹底した振り返りを行います。まず、自分の実習体験を文字化し、自分自身で振り返ります。その後、いくつかのグループに分かれ、同じ施設に行った人や、他の施設に行った人と実習先での出来事や感じたことについて、報告、議論をします。この活動を経て、新しい視点を獲得し、自らの経験をこれまでとは違う目線で解釈できるようになります。
実習体験を十分に深めた後、心理インターンシップの総仕上げとしての報告会に向けての準備と、報告書の作成に、すべての学生が1つのチームとなって主体的に取り組みます。この作業を通して、仲間と連携・協力することの重要さを体得します。
報告会の準備と報告書の作成は、学生が想像する以上にハードな活動です。心理インターンシップを受講した先輩たちが相談に乗ってくれたり、アドバイスをくれたりすることもあります。しかし何よりも、自分たちで成し遂げたという達成感が、学生一人ひとりの大きな変化成長を促します。
毎年、報告会は大学内外の人が多く来場します。実習生を知る皆さんから、実習生の大きな育ちに驚きの声が聞かれます。
2021年の報告会では、自らの実習経験を基に「動機づけを高める支援方法」や「コミュニケーションの工夫」、「自己効力感」や「向社会的行動」に関する報告がなされました。
同学科の安永悟先生は「心理インターンシップで、仲間と一緒に目標に向けて努力できる力、仲間を思いやる心が育つのだと思います。自分のおかれた現場をしっかりと観察し、他者を思いやり、必要に応じて真剣に対話して学ぶ。学んだ内容を他者に伝わるようにアウトプットする。これらの能力は、現実社会において求められる力です。学生が自信を持てるように、これからも実践的に学べる環境を作っていきたい」と話してくれました。
安永 悟
心理学科 教授
久留米大学文学部教授、大学院心理学研究科教授を兼任。博士(教育心理学)。日本協同教育学会会長、初年次教育学会会長代行、協同教育研究所「結風」代表。「教育心理学」や「心理インターンシップ」を担当。LTD話し合い学習法を中核に据えた授業モデルの開発と実践に携わる。「LTD話し合い学習法」(ナカニシヤ出版)、「授業を活性化するLTD」(医学書院)など。
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